日経新聞3 [04/03/11]
沖縄の、ポテンシャル。

東沖縄県に誕生した、国内唯一の一国二制度的な優遇制度を備えた
「経済特区」(特別自由貿易地域・情報特区・金融特区)。
法人税35%軽減をはじめとする、これらの優遇制度は、
日本の経済構造に、東アジア経済圏に大きな衝撃をもたらしました。

大きく成長を遂げる東アジア経済の中心に位置する地理的優位性に
秘められた産業の可能性、沖縄に潜むポテンシャル、未来のビジョンとは?
日本経団連・宮原副会長とノンフィクション作家の山根一眞氏が
那覇市で、稲嶺沖縄県知事と会談しました。


○日本経団連が、本格的に「投資環境視察ミッション」を沖縄に派遣。


【山根氏】
 私、西表島が大好きで沖縄によく来ているんですが、
 稲嶺知事とお会いして「経済特区」の話を伺って、日本の中に
 シンガポールができたのかなと、しかも日本語が通じる・・・。
 これは、すばらしいと思い、こうやって沖縄にさらにのめり込んでいます。

【稲嶺知事】
 なるほど・・・。ありがとうございます。

【山根氏】
 宮原さん、今回、日本経団連として「投資環境視察ミッション」を
 沖縄に派遣した目的は何ですか。

【宮原副会長】
 実は、この沖縄について、いろいろ勉強させてもらうとね、
 日本の閉塞感を破る、ものすごいポテンシャルがあるんじゃないかと。
 しかも日本の経済はものすごいグローバライゼーションで、
 私もビジネスの中で言っているのですが、「もう日本の中だけで
 見るのはダメだと、少なくとも東アジア経済圏、そういうスコープで
 常にものを考えていかないと」。何かしたいと思うときに、
 沖縄はいいポジションにあります。
 だから、沖縄はいろんなものを発信できるのではないかと・・・。

【稲嶺知事】
 中国など海外に進出すると、確かに人件費は安いが、
 言語・風俗・習慣の違いなどでクオリティーの確保に苦労する。
 また、知的財産権の問題もある。中小企業などは簡単には海外に
 進出できない。企業の一部には国内回帰の動きもある。
 これは、わが国唯一の「経済特区」を持つ沖縄にとってチャンスだと
 思っています。

【山根氏】
 法人税の35%軽減など税金が非常に安いとか、
 あるいは人件費の補助が出るとか、「経済特区」って日本では
 考えられなかったじゃないですか?

【稲嶺知事】
 初期投資を大幅に軽減する賃貸工場やベンチャー企業のために
 インキュベート施設も整備しているんですよ。
 賃貸工場に立地した企業の話によると10分の1の初期投資コストで
 済んだとの評価をいただいています。

【宮原副会長】
 やっぱり沖縄のユニークさってのは素晴らしい。
 これは日本の理想ですよね。

【山根氏】
 東アジア地域と比較した場合、人件費の問題はありますけど、
 特区のメリットを活かしていけば、十分に競争力が持てると思う…。

【宮原副会長】
 十分持てると思います。
 今、チャイナ・プラスワンという言葉が流行っています。
 チャイナだけでは不安。沖縄の人件費は全国の8割くらいですが、
 しかし中国とは比べものにならない。
 でも、知事が言ったように、クオリティーの面も大事。
 そのバランスの問題が出てきて、沖縄はその選択の中に入る。
 やっぱり沖縄の今持っているアドバンテージをきちっと企業に
 発信していけば、十分選択されるポジションにあると言えますね。


○ Made in JAPANのブランド力

【稲嶺知事】
 沖縄は自立できる努力をしたい。
 そのため、私は「経済特区」を「釣具」に例えてそれを下さいと言った。
 「お魚」は食べればなくなるが釣具があれば釣り人である
 沖縄側の努力と工夫次第でいろんなことができるからです。

【宮原副会長】
 知事の話を聞いていると沖縄のハンディキャップとはなんだろうか、
 特性とはなんだろうかとちゃんと考えながら展開されていますね。

【稲嶺知事】
 はい。
 沖縄の特性を活かす産業としては、まずIT関連だと思います。
 私が知事に就任して5年間でコールセンターを中心に70数社の
 企業が立地している。
 最近ではデータセンターとか、コンテンツとかソフトウエアとか、
 幅も広がってきました。
 次に、モノづくりでは、沖縄の地政学的特性を活用した
 加工・交易型産業の振興です。
 沖縄を中心とする半径2000kmの圏内に、東京、大阪のほか、台湾、
 上海、ソウル、香港、マニラなど、東アジア経済圏の主要な都市がある。
 私はこの特性と特区の優遇措置を活かして、
 高付加価値かつ単独立地が可能な業種、あるいは規模は小さくても
 世界に誇れる独自技術を持つオンリーワン的な企業を
 ぜひ育てていきたいですね。

【宮原副会長】
 おっしゃる通り。「オンリーワン」ですね。新しいし、面白い。
 アメリカでITのベンチャーが育ったのは、大学の研究機関が、
 企業と産学共同研究をしているからです。
 今考えておられる自然科学系大学院大学がスタートして、
 世界の研究者が集まる・・・。
 これはものすごくビジネスによい機会ですね。

【山根氏】
 沖縄は、小さいけれど極めて利益の高いモノづくり、
 先端機能を担っていくのが大事だと思います。

【宮原副会長】
 クオリティーとの競争ですよ。
 「質×コスト」ということで十分そういうモノづくりもあると思います。

【山根氏】
 世界での競争は厳しいけれど、大事なのはブランド力。
 日本はモノづくりに関してはNO.1のブランド力が確実にありますよ。

【稲嶺知事】
 中国に進出した日本の企業が、やっぱり「Made in JAPAN」が
 いいって、特別自由貿易地域に立地した。
 この信用って素晴らしいですよね。

【宮原副会長、山根氏】
 ブランド力!

○世界最高水準のバイオ産業へ

【稲嶺知事】
 私が次に狙っているのがバイオ関連産業です。

【山根氏】
 私はアマゾンが好きで30年間通い続けていますが、
 薬品の多くは、自然界で、特に熱帯から見つかっています。

【稲嶺知事】
 そのとおり。亜熱帯というのは、熱帯の北限であり、
 温帯の南限でありますから有用微生物にしても、
 非常に幅が広いものがあるわけですよ。
 私はバイオ関連産業を育てていくために、昨年、「沖縄健康
 バイオテクノロジー研究開発センター」をオープンさせました。
 また、国において2007年を基本目標に「Best in the World」を
 目指す沖縄科学技術大学院大学を設置することになっており、
 すでにノーベル賞受賞者のシドニー・ブレナーさんが学長に
 内定しています。

【山根氏】
 どうして、こんなおいしい話を、企業の皆さんは
 理解していないんですか?

【宮原副会長】
 山根さんがおっしゃったような沖縄のメリットは必ずしも
 国内の企業に理解されていないですよね。
 私もね、実は、いろいろ勉強させていただいて、
 これはやはり相当だなぁと感じています。

【稲嶺知事】
 今日は沖縄に足を運んでいただき、
 また貴重なアドバイスをありがとうございました。
 全国の企業の皆さん、ぜひ、一度お越しいただき、
 「変わりつつある沖縄」を直に見ていただきたい。
 また、ご連絡いただければ私なり、担当者なりが
 いつでも皆様のもとにまいります。






●宮原賢次(みやはら けんじ)氏
日本経団連副会長・
住友商事株式会社会長
1935年 京都府生まれ
‘58年京都大学法学部卒業。
住友商事株式会社入社。
住友商事株式会社代表取締役会長、
日本経済団体連合会副会長。
その他、日本貿易会会長、
外務省ODA総合戦略会議委員、
日本銀行参与など公職も多数。





●稲嶺惠一(いなみね けいいち)知事
沖縄県知事
1933年、中国遼寧省大連市生まれ。
‘57年慶應義塾大学経済学部卒業。
いすゞ自動車株式会社入社。
’73年株式会社りゅうせき
(旧・琉球石油(株))入社。
‘86年代表取締役社長に就任。
沖縄経営者協会会長などを経て、
’98年沖縄県知事就任。二期目。





●山根一眞(やまね かずま)氏
ノンフィクション作家
1947年東京都生まれ。
獨協大学外国語学部卒業。
産業、地域振興、野生動物など
幅広い分野で取材・執筆活動を続ける。
EXPO2005愛知県プロデューサー、
宇宙科学研究所客員教授、
著書に「デジタル産業革命」
「メタルカラーの時代」シリーズ等多数。
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