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『安倍政権下におけるイノベーション教育』
(JMAマネジメントレビュー 2007年2月号) (2/2)

特徴あるMOT大学院
 さて、学生や派遣元企業が求める「学ぶための環境」が整っているかどうか、133校を評価するなかで、特徴的な大学院がいくつか明らかになった。逆説的にいえば、こうした特徴的な大学院は、将来、MOT大学院やMBA大学院がより普遍的に地域社会や企業に受け入れられた場合、ポイントを重ね、人気が出てくると考えられる。

@MOTとMBAのいずれかを選択できるケース
 前述のとおり、MOTとMBAのいずれかを選択できる大学院が登場している。

 例えば、立命館アジア太平洋大学のMBAコースでは、「ファイナンス」、「国際ビジネスとマーケティング」に加えて「イノベーションと技術経営」の3つの中から専門分野を選ぶシステムを採用している。また、法政大学ビジネススクールは、MBAが基本であるが、MBIT(情報技術修士)も選択可能としており、MOTの一種と判断できよう。

 さらに、同志社ビジネススクールや大阪大学経済学研究科では、工学研究科と連携し、3年間でMBAと工学修士のダブルディグリーの取得を可能としている。

 これらMOT&MBAに分類される大学院のランキングが上位を占めているのは、けっして偶然ではなく、柔軟な選択肢を用意し、優秀な学生を獲得する努力が大学院にも求められることを示唆するものである。

A特定分野へ特化しているケース
 特定分野に特化し、明確な差別化が出来ている大学も出現した。例えば、光産業創生大学院大学では、入学と同時に起業し、会社を経営しながら受講することを学位(博士)授与の条件としている。いうなれば、ベンチャーを実践し、体感することで、実力を養うという方法だ。

 その他、3つの大学がそれぞれの得意分野を出し合い、社会人教育を担うプログラムが立ち上がっているケースもある。滋賀大学(社会科学系)、滋賀県立大学(理工学系)、長浜バイオ大学(バイオサイエンス系)は「湖北“学・学”連携協議会」を発足させ、地域や行政からのバックアップをもとに、地域中小企業の事業活性化、第二創業などを担う人材育成を目指している。

B国際対応 (海外校との連携)のケース
 MOT大学院は、そのオープンネットワーク性から、海外大学院との連携を深め、自らが海外に出向き、諸外国の教育にも力を入れることが想定される。

 例えば、サイコム・インターナショナルでは、エグゼクティブに向けたMOT短期集中プログラムを米国ボストンで実施している。これは、提携するMITが従来のMOTプログラムとエグゼクティブプログラムを改編・集約し、10日間コースとしたものだ。講義は全て英語で行われる。

 また、早稲田大学ビジネススクールは、シンガポールのナンヤン工科大学と共同で、両大学のMBAを同時に取得できるプログラムを提供しているが、2週間の日本におけるスタディミッション以外は、ナンヤン大学で実施されている。

C対象とする学生をはっきり示しているケース
 山形大学大学院ものづくり技術経営学専攻では、モノづくりをする中小企業の二代目、三代目を育てることを第一の目的としている。いわば、山形県周辺の日本の産業を支えた付加価値を、次世代に伝承する部分を担うことになる。

 同様に、地域の活性化を目指す動きとしては、新潟大学大学院が挙げられる。新潟の地域産業を再構築するための原動力として中堅の技術者や管理者、後継者などの育成を目指している。

 一方、東レ経営研究所では、10〜15年程度の実務経験のある研究開発や事業企画のリーダーを対象にしている。これは、新卒や社会人経験が短い人よりも、それぞれの分野でのエキスパートのさらなるコラボレーションを期待するものである。

D学生の利便性を考慮しているケース
 富山県立大学大学院は、1年コースは論文準修士とし、さらに1年延長することで、大学院修士を与えるコース設計にしており、短期に実力を蓄えたいニーズに応えている。また、東京農工大学はサテライト教室での遠隔授業やe-learningの体制整備を進め、社会人の勤務と学業の両立を支援している。さらに、「働く母」や「共働きの父」をターゲットに、無料の託児サービスを実施しているグロービス経営大学院のケースもある。

MOT大学院評価分析〜1年目と2年目の違い
 MOT大学院の評価分析は、まだまだ模索の状況だが、2年目に入りMBAを加えることによって見えてきたものがある。

 MBAとMOTの違いは何か。 MBAはすでに15〜20年余の歴史を持っており、試行錯誤の結果、様々な工夫がなされているなかで、MOTはどのように差別化を図り、何を訴求していくのか。

 少なくとも、MBAという先行集団があり、それを追う者として、敵対して相手(MBA)の欠点を見出し、凌駕しようとするのではなく、双方の良さを加味し、さらなる進化を模索する大学院の努力が見えてくる。現場では学生と教員が、より良き大学院ならびに授業スタイルを目指し、創意工夫しているのも事実である。

 また、MBAの物まねではなく、技術を基礎に、技術立国日本の再生にどこまで応えることが出来るか、独自の発展を模索している心強いMOT大学院も出始めている。研究科として単独に存在するのではなく、学内外を接続するハブとして機能し、情報の創造と増幅に教員、学生がスキルを発揮することが期待されており、まだまだ成長が見込まれる。

 一方、MOTがMBAに吸い込まれようとする動きがあるのも事実だ。MOTとMBAであれば、MBAの学位の方が柔軟性や包容力があり、卒業後に能力を発揮しやすいと考える学生がいても不思議ではない。これは、MOTはMBAに比べて、成熟するまでの時間的猶予を与えられていない(経営のレベルでの大学や大学院の淘汰からは、MBA以上にパフォーマンス=成果を目に見える形で求められている)ことを示唆している。

ランキングの進化
 さて、今年は、昨年の評価項目である「A.学生」「B.教員」「C.カリキュラム」「D.インフラ」「E.ネットワーク」「F.パフォーマンス」に、「G.マネジメント」を加え、さらなる進化を目指した。

 評価にあたっての情報源は、Ver.1(2006年10月末)では公開情報を元にしているが、2007年1月末にはアンケートやヒアリング結果などを加えたVer.2を発表予定だ。さらに先には、Ver.3として、良質なコミュニティを形成し、評判や人気、学生や教員などによる相互評価なども加えていければと考えている。続報を楽しみにしていただきたい。

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